『微熱のころ』  〜月下美人〜


『微熱のころ 第16話 〜月下美人〜』


信じられない光景に全身が震えたつ。
蛍光灯の灯りの下で、やけに青白く見える己の両脚の間に俯く黒髪。少し長めの前髪の隙間から見えるものは、恥ずかしい程に猛った俺の欲望を口に含む野分の姿。

散々手で嬲った後、何の躊躇もなくそれを頬張ったアイツは、驚く程巧みに俺を追い上げていった。片手で双袋を優しくさするように愛撫しながら、勃起した俺自身を強く吸い上げる。くびれた部分を舌先でなぞられ、鈴口に舌を押し込まれて、俺はあっけなく野分の口中で果てた。

「はぁ・・・ア・・・野分・・・。」

限界まで高まった熱が冷めてしまえば、残るのは羞恥と罪悪感ばかりで、最後の一滴まで搾り取ろうとするかのごとく、達した後の俺をまだしゃぶり続けている野分の姿に、俺は慌てて腰を引いた。

「も・・・くすぐった・・・・から・・・離せ。」

野分の髪を掴んで顔を起こさせると、どこか挑発的な眼差しがゆっくりと俺を見据える。

「ヒロさん・・・次はどうされたいですか?」

イッたばかりで、くったりと力を無くした俺のものを尚も手で上下に擦りながら、野分が意地悪く俺に尋ねる。
突き放して逃げようと思えば簡単に逃げられるし、きつく罵倒すれば野分の事だ、それ以上の無茶をしてくるとは思えないのに、体は全く動かないし、拒絶の言葉など何ひとつ浮かばなかった。
それどころか、欲情に濡れた野分の顔を見てからずっと、体の奥の方が疼いて、その熱を鎮めてくれるなら、もうどうなったっていい、と思っている自分に気付き愕然とする。

「も・・・もうそこは止めろ・・・。」

力を無くしていたはずのそこが、野分の手の中でくちゅくちゅと揉みほぐされて、少しずつ形を変え始めている。それをぼんやりと見つめる俺に見せつけるように野分は手を握ったり開いてみせたりしながら、俺の反応を確かめているようだった。

「じゃあどこなら良いです?教えて下さい。」

突然そう言い放つと、野分は俺自身を握っていた手を離し、僅かに身を引くとゆっくりと俺に問うた。
これは最後通牒だ。
このまま野分を巻き添えにして堕ちたいのか、ここで踏みとどまりギリギリのライン上であっても家族として生きていくのか。
野分は俺にそれを決めろと言う。
兄で・・・こいつより4歳も年上なのだから、それも至極当然の事か。

じゃあ野分、お前は本当はどうしたいんだ。
逆に問えるものならば聞いてみたい。

「それとも・・・もう終わりにしますか?」

感情を押し殺したようないつもより低い声でそう言った野分の握った拳が小さく震えている。

傲慢な態度をとりながらも、その表情は叱られるのを恐れる子供の様で、俺の中に野分への想いが次から次へと溢れだしていく。
だめだ、だめなんだ、・・・お前じゃなきゃ。



ごめん・・・俺はもう、お前の兄ではいられない。



「・・・・・の・・・・野分・・・・。」

「・・・はい?」

「お前は・・・・俺を・・・・抱けばいい。」

「え・・・・?抱・・けば?」

「どうせ・・・性欲を吐き出すだけなんだろうから・・・お前は練習を兼ねて俺を抱いてみたら良い・・・。」

これでも精一杯の虚勢を張ったつもりだった。
野分に逃げ口を作っておいてやりたかったのかもしれない。

どれだけなけなしのプライドを踏みつけようとも「抱いて欲しい」と言う事は出来ず、そんな湾曲した表現になってしまった。これで野分が怖じ気づいて止めると言えば、それはそれで別に良かった。
野分には可愛い彼女だっているんだ。例えまだそこまでの関係でなくったって、いつか自然と求め合う日が来る事もあるだろう。その時の為に大事にとって置いたって構わないんだ。

野分の顔に一瞬浮かんだ、驚きと困惑の表情が、瞬きのうちに欲に濡れた牡(おとこ)の顔つきに変わる。

もしかしたら取り返しのつかない事を始めようとしているんじゃないか、という背徳感と、好きで好きでどうしようもなかった男に求められる悦びとで、俺の心は真っ二つに引き裂かれようとしていた。


  ◇ 続く ◇








『微熱のころ 第17話 〜月下美人〜』


俺は野分の見つめる目の前で着ている物を全て脱いだ。
コイツの前で裸になる事なんて、ガキの頃から数え切れないくらいあったのに、こんなに正面からジロジロと眺められるのは初めてだと思う。
羞恥に耐えながら、野分が服を脱ぐのを手伝う。

下着と一緒に穿いていたジャージを引き下ろすと、腹に付きそうな勢いで野分のそれが飛び出してきた。両手の指を絡めると、ビクンと跳ね上がり俺にその存在感を示す。

俺の体に触れようと手を伸ばしてくる野分の手を制して、片手で野分の高ぶりを扱きながら、仰向けに寝るよう促す。「今度はお前の番だから」と囁くと、野分は素直に従い目の前に体を横たえた。

さっきの意趣返しのつもりで今度は俺がじろじろと野分の体を眺める。
身長差も大きいが、こうやって見ると肩幅から胸板の厚みから手足の長さ太さまで、俺とは全然造りが違う。健康的に焼けた肌はうっすらと汗に濡れていて、手のひらで心臓のあたりにそっと触れると、妙に真剣な表情でじっと見つめられた。

・・・・・野分。
宝物みたいに何より大切な俺の・・・・。

ヒロちゃん、ヒロちゃんって俺の背中ばかり追っかけてたと思ったら、いつの間にかこんなに大きくて、誰が見ても魅力的な男に育ってしまって・・・。

俺は野分の視線に晒されながら、仰向けに寝た野分の脚を跨ぐとそのまま脚の上に腰を下ろした。
天を突いたままの野分自身に指を絡めながら上下に緩急をつけて擦ると、野分が小さく呻く。

「は・・・・っああ・・・ヒロ・・・・さん・・・っ。」

両手を添えても隠れきれない程に膨れあがった野分のそれは、俺が指を動かす度にまた更に大きさと硬度を増していった。

「お前のってさ・・・前から思ってたけど・・デカい・・・・・よな…。」

「ふっ・・・そう・・・・・・なのかな・・・・・自分じゃよく分かりません。」

「俺・・・こんなの・・・っ。」

手で握っただけでも分かる。自分のものとは比べ物にならない程、太く大きい・・・。
これが欲しいと思う気持ちと、こんなに大きなものが入る訳がないという本能的な恐怖心とがせめぎ合う。でも、このチャンスを逃したら、もう2度と野分に抱かれる機会などないかもしれないのだ。
大丈夫・・・どんなに苦しくても耐えられる。
体が例えバラバラになったとしても俺は・・・どうしても、野分が欲しい。

扱く手の動きを早めると、野分が大きく体を揺らした。

「うっ・・・ヒロさん俺・・・!」

コイツにとってこんな事、望まない状況だと思うのに、俺の手に感じてくれているのが嬉しかった。
初めて見た、快楽を追う野分の姿は色っぽくていやらしくて、俺の中に僅かに残っていた最後の理性が吹っ飛んでしまう。

「あ!ヒロさんそれは!・・・・やめ・・・・っ。」

気がついた時には、俺は野分の勃起しきったそれを口いっぱいに頬張っていた。
もっと抵抗感を感じるかと思っていた口淫は、いざやってみると何の嫌悪感も違和感も感じず、ただひたすら夢中になって俺は野分のものを舐めしゃぶった。

「・・・・はっ・・・あぁ・・・あ・・・。」

口の中に拡がる青くさいような苦みも、野分が吐き出す吐息も、俺の中で悦びに変わる。
野分の指が躊躇う様にふわりと俺の前髪に触れ、少し掻き乱した後、髪に指を絡めるようにして緩く掴まれた。

「う・・・うう・・・ヒ・・・・ロ・・・さ。」

歯を立てないように注意しながら、唇で上下に強く擦り続けると、野分の腰が喉を突く動きで揺れ始める。ぐっと喉の奥を突かれる度に苦しくて涙が滲んできたけれど、やめたいとは全く思わなかった。
もっともっと感じて欲しい。
彼女には出来ないようなヒドイ事も、俺には遠慮なんてしなくていい。
お前がくれるものならば、痛みも苦しみも、悲しみでさえも俺はみんなみんな受け止めるから。

「ヒロ・・・さん・・・・あっ・・・俺、あ!っもう!」

いっそう口を押し拡げる様に大きく膨らんだそれが、野分の限界を俺に教えてくれる。急に俺を引き離そうと髪の毛を引っ張られるが、俺は野分の手を払いのけて、離してたまるかとばかりにさらに強くそれを吸った。


  ◇ 続く ◇






『微熱のころ 第18話 〜月下美人〜』



野分の動きが一瞬止まり、直後喉の奥深くどろりとした迸りが勢いよく発射された。
まだビクビクと震えている野分自身の先端を咥えたままはみ出た部分を指で扱き、残滓まで全て吐き出させる。
口の中いっぱいに野分の放ったものを含んだまま、俺は手で口を覆ってそっと野分から体を離した。

用意しておいたローションを部屋まで取りに行く余裕はない。だとしたら・・・方法はこれしか考えつかなかった。
口に含んでいたものを手のひらに吐き出すと、俺は白く濁った野分の精を指ですくって自分の脚の間へと差し入れ、窄まった入口へと塗り込んでいく。

怖くないと言えば嘘になる。
今までにも自慰の最中に自分で指を入れてみたりした事はあるが、所詮そこまでだ。ただでさえ野分のものは指とは比べ物にならない程大きいのに。

指先を濡らして、襞を分け入り奥まで差し入れると、入口近くの皮膚がぴりぴりと痛んだ。

「ヒ・・・ヒロさん?!」

背後から回り込んで俺の顔を覗き込んだ野分が素っ頓狂な声をあげる。

「な・・・なにを・・・・?!」

驚きつつも野分の視線は開かれた俺の脚の間へと注がれていて、さっきまでは焦りのせいで感じなかった羞恥心が一気に吹き出してくる。
俺は自分の指を後孔に突き立てたまま、死にそうなくらいの恥ずかしさで顔を俯かせた。

呆れられるかと思った野分は、最初驚いた上に頬を赤らめて俺の行為を唖然と見つめていたが、徐々にその顔は怒ったような、俺を責めるような表情に変化していき、それと同時に隠せない程の欲望を身に纏っていった。

「・・・こうやって・・・濡らして解さないと・・入れるの・・・・大変だって・・・。」

小声でそうつぶやくと、俺は野分の視線に晒されながら、指を動かし続けた。
羞恥に自然と閉じようとする膝を背後から左右に大きく割られ、食い入るように凝視されて思わず息があがる。

「ヒロさん・・・・・・。」

耳をくすぐる熱い野分の吐息混じりの声に煽られて、体の奥の方がジンと疼いた。

「ん・・・何か、もう・・・大丈夫なんじゃ・・・ないか?」

これ以上野分の前で、体を弄り続ける事に耐えられそうになくて、先を急ごうとした俺の肩を野分の手が掴む。

「駄目だと思います・・・・。そんなんじゃ。・・・もっとしてて下さい。」

背中から抱くようにして体を密着させてきた野分の両腕が背後から伸ばされ、その指先は俺の肌の上をするりと滑った後、すぐに乳首を探り当てた。くすぐるみたいに先端を指で丸く撫でられ、ぞくりと背中が震える。

「ヤ・・・野分・・・くすぐってぇ・・。」

「ここも・・・・慣らすと感じるみたいですよ。」

野分はそう言うと、指の腹で擦ったり、指先で緩く摘んだりして、俺の胸を弄り始めた。

自分が女のように胸でも感じられる事に少し驚いていると、後ろから耳たぶを甘咬みされて思わず自分でも呆れるような快感を滲ませた声が漏れた。その様子に野分は小さく笑うとさらに耳のやわらかい箇所をちゅっと吸い上げてくる。

「のわ・・・くすぐったいって・・・。」

「本当に?くすぐったいだけです・・・・・?」

勃ちあがって敏感になってきた乳首の先を押しつぶすように強く抓まれ、指先で捏ねまわされて、突然の強い刺激に言葉通り体がビクンと跳ね上がった。

「あっ・・・アア・・・・嫌・・・だ・・・。」

俺の強い反応に、野分はさらに胸ばかりを攻めてくる。

俯いた首筋を後ろから舐められ、少し強めに口づけられて俺は堪らずに背後の野分を振り返った。途端、それを待ち構えていたように唇を塞がれる。俺は夢中で野分の舌に己の舌を絡ませ、口中に溜まった二人分の唾液を喉を鳴らして飲み下した。

「ん・・・・んふ・・・っ・・。」

息も止まりそうな程に強く吸われて、吐息までがぐずぐずに甘くとかされていく。


  ◇ 続く ◇




『微熱のころ 第19話 〜月下美人〜』



そういえば、子供の頃・・・野分とよくキスをした。
それは遊びの延長の様なもので、ただ唇と唇を押し付け合い、ぺろぺろと仔犬同士が舐め合う様な可愛らしい行為で、さすがに親の見ている前ではしなかったけれど、2人きりの時何かにつけてよくキスをした。
いつしか2人共大きくなって、こういう事はよくない事と気付いてやらなくなってしまったけれど、今俺達は、「よくない事」だと分かっていて唇を重ね合っている。

唇を甘咬みしつつ、乳首を執拗に弄られて、塞がれたままの唇からくぐもった喘ぎが零れ落ちた。

「ん・・・・ンう・・・ふ・・。」

野分に胸を触ってもらいながら、俺は受け入れる為の準備を再開した。
背中から抱かれる様な体勢で野分の胸に体重を預け、指先を体の奥深く沈めていく。内側で円を描くみたいに指を蠢かせると、ぐちゅぐちゅと湿った音がして、恥ずかしさに何度も挫けそうになった。

乳首を捏ねていた野分の片手が俺の昂ぶりに伸ばされ、柔らかく握り込まれる。

「あ・・・はぁ・・・・・・っ。」

「ヒロさん・・・又勃ってますよ・・・。こっちも・・・ああ・・凄いコリコリに硬くなって・・・。」

「や・・・ばっ・・・ばか・・・ンな、はずか・・・しい事・・・。」

野分の手に擦られて、目の前でどんどんと高められていってしまう。
下半身の変化をじっと見つめられて、羞恥に脚を閉じようとする度に大きく左右に膝を開かれ、手の中で硬く勃ち上がったものを見せつける様に撫で回される。

「ヒロさん・・・俺・・・俺、そっちもしたいです・・・・。」

何が、と聞きかえす余裕もなく、野分に体を引き寄せられ、そのままベッドに押し倒された。

「やぁ・・・野分・・・なに・・・。」

「ヒロさん、痛かったらごめんなさい。」

野分は俺の両脚の間に潜り込むと、俺の手の中に残った自身の残滓を指に絡めて、さっきまで指を飲み込んでいたその箇所に指先を押しつけてきた。

胸の中に拡がる、本能的な恐れと期待感。
こわい・・・でも欲しい・・・体の1番深い場所で野分を・・・感じてみたい。

最初、遠慮がちに入口の周辺を撫でていた指先が、ぐっと差し込まれる。

「あ・・・あ・・・っ・・のわっ・・・!!!」

思わず力が入ってしまって、野分の指先をきつく締め付けてしまう。
多分、ほんの数センチ、潜り込んでいるだけだと分かっているのに、それが野分の体の一部なのだ・・・と認識するだけで体温が何度か上がりそうだった。

もっと、もっと触れて欲しい。
野分がしたい事を・・・触りたいように触って、好きなだけ突っ込んで、俺を思うまま貪ればいい。
そして・・・甘い期待など出来ないように、酷く乱暴に扱ってくれた方がいい。

「ヒロさん・・・いや・・・・?」

指先だけを埋め込んだまま、心配そうに俺の顔を覗く野分。
バカだなぁ。そんな遠慮なんてしなくていいんだ。どんなに痛くても、この胸の痛みに比べたら大した事ないのだから。

「ヒロさん・・・。嫌だったら・・・。」

「違・・・あ・・・そんな・・いやじゃ・・・。」

やめないで。

声に出せない想いを吐き出した瞬間、一気に指先が根本まで押し込まれた。
予測していなかった衝撃に、俺は体を仰け反らせて小さな悲鳴をあげる。

「は・・・ああぁっ!」

「ごめんなさい。痛かったですか・・・?」

声を抑えようと自分で自分の口を塞いだ。
いくら遅い時間だとはいえ、階下には両親も眠っているのだから。

オロオロと見つめてくる野分に、首を左右に振って大丈夫なのだと伝えると、塞いだ手の甲に軽く口づけられた。

「指・・・動かしても、いいですか?」

耳元で囁かれて、野分の指を受け入れている箇所が痛いくらいにズキンと疼いた。



  ◇ 続く ◇




月下美人 2009/8/28〜  連載中
   


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