『髪』 |
『髪』
二人揃っての休日。 俺の背中にもたれて本を読むヒロさんの背中の重さや、時々触れあう肘が気持ち良くて、ヒロさんに触れたくて我慢出来なくなった俺は、読書の邪魔にならないよう、そーっとその肩を抱き込んだ。 「何・・・?」 ヒロさんは本に視線を落としたまま、こっちも見ないでつぶやく。 「ヒロさんを補給したいです。」 「昨日いっぱいしたじゃねーか。」 「まだまだ足りません。もっと・・・俺に下さい。」 だって、今度いつこうしてゆっくりヒロさんを抱けるか分からないのだから。 ヒロさんは黙って本のページを見つめたままだったけれど、俺は気付いてしまった。さっきからずっとそのページのままヒロさんが動けなくなっている事。 俺の次の動きを待っている、そんな可愛い期待を汲んで、俺はヒロさんの手から読みかけの本を受け取り、机の上へと置くと、そのまま床に押し倒した。 リビングの窓から入る、夕暮れの日差しがヒロさんの髪を輝かせる。 床の上、仰向けに横たわった彼の体からはすでに力は抜けていて、俺はその腰を跨ぐようにして体を密着させていった。 ヒロさんの腰に俺の腰を押しつけると、小さな呻きと共に甘い吐息が唇から漏れる。 ベッドに運んであげたかったけれど、そんな可愛い様子を見て、もうどうしようもない程堪らなくなってしまう。 服の裾から手を差し入れ、滑らかな胸を辿っていった指先が、すでにツンと硬くなっている胸のしこりを探り当てる。 「・・・・あっ・・・・・。」 左右にあるそれを、指先で柔らかくこねてあげると、それだけでヒロさんは可愛い声を漏らし始める。 シャツの釦を外して胸元をはだけると、白い肌のところどころに昨夜の情事の痕が見える。
ヒロさんがシャワーを使っている間、夕飯の支度を始める。 「野分、お前シャワーは?」 「夕食の後にします。お風呂用意しますから一緒に入りましょう。」 「まだ、足りないとか言うなよ・・・・。」 「ご飯みたいにお腹いっぱいになれればいいんですけどね。ヒロさんの場合、抱けば抱く程もっと欲しくなって困ってしまいます。」 俺の言葉にさっと頬を染めたヒロさんの洗い髪をタオルで拭きながら、俺は机の上に用意しておいたドライヤーを手にとった。 直接熱風が顔にかからないように角度を調節しながらドライヤーの風をあてると、気持ちいいのだろう、ヒロさんはうっとりと目を閉じる。 その無防備な顔にキスしたい衝動に駆られながら、俺は彼の髪を乾かす事に集中した。 ほんの一瞬の無意識の微笑。 その美しさに見惚れていると、パチッと瞼が開かれいつものヒロさんに戻って、ぼおっとしている俺を不思議そうな顔で見る。 「ば・・・晩ご飯、肉と魚どっちがいいですか?」 「そうだなー。がっつり肉食べたい気分かな。誰かさんのせいでせっかくの休みなのに、全然体休まんないからな。」 「・・・すみません。」 思わず謝ると、それが可笑しかったのかヒロさんの目が細まり、ニッと口角が上がる。時々見せてくれる、そんないたずらっ子みたいな顔もたまらなく愛おしい。 「メシ作るんだったら何か手伝う。俺にでも出来る事あるならよこせ。」 「分かりました。じゃあヒロさんはそこにある玉ねぎむいて下さい。2個使います。」 そうお願いすると、ヒロさんは真剣な顔で玉ねぎの皮を丁寧にむき始め、その隣で俺はフライパンで焦がさないよう大蒜の欠片をオリーブオイルで炒める。 明日からまた始まる忙しい日々を乗り越えられるよう、爪の先までヒロさんで満たしたくて、俺は可愛いその横顔をいつまでも見つめていた。
髪→撫でる でした。
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