『可愛く酔わせて』



うちのヒロさんは酒癖が悪い。

だからと言って、別に暴れて店を壊したり、看板を蹴って倒したりはしないし
酔ってエロ親父になった挙げ句まわりの人にセクハラをはたらいたりもしない
じゃあ、どんな風に癖が悪いのかと言うと・・・・・・

・・・・・可愛いくなってしまうのだ。

とろーんとした眼差し
ピンク色に染まったやわらかい頬
呂律も回らず、ふにゃふにゃになった上に
俺にすら普段見せてくれない程の
甘えん坊になってしまったりもする。

外で飲まれて、そんな姿を晒したりしたら
ヒロさんが男達から狙われてしまうかもしれないし
女性から誘われてしまうかもしれない
・・・そんなのダメだ。
だってヒロさんは、俺だけのヒロさんなのだから。

なので、お酒が大好きなヒロさんが
外に飲みに行かなくてもいいように
俺はヒロさんの好きなつまみをいくつも机に並べて
ビールとワインを冷蔵庫で冷やす・・・・・





「のーわーーーーきーーーーー。」

「へ?何・・・どうしたんですか?ヒロさん。」

突然大声で呼ばれて、キッチンから振り返ると
目の前にヒロさんが立っていて、しかも、その顔を見ると
すっかり目が据わってしまっていた。

「どうしました?ビールならまだ冷蔵庫に・・・。」

「ビールじゃねぇ。」

「今、焼きうどん作ってます。」

「つまみの心配もしてねぇ。」

「・・・・何でしょう?」

ヒロさんは肩を掴んで、俺をキッチンのスツールに座らせると
息がかかる程の至近距離まで顔を近づけてきた。

「つまみなんざ、お前でいーんだ。」

「・・・へ?」

「1人で飲むの・・・つまらねーーー。」

そう言った後、口をへの字にしてじっと俺を見つめている
ヒロさんがあんまりにも可愛いくて
スツールに腰掛けたまま、その細い腰を抱き寄せた。

「つまみは・・・も、いいから・・・一緒に、飲め。」

「・・・はい。」

可愛い可愛いヒロさん。
俺もつまみは・・・いらないかもしれません。
・・・・・あなたの姿を眺めているだけで
十分に酔えそうだから。












2009年9月〜12月 拍手お礼ページより。
SS 長谷川舞
挿絵 鈴木イチさん



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