『俺の世界の中心』

『俺の世界の中心』


ずっと憧れていた人が、俺の「恋人」になってくれてから2週間が過ぎた。

やっとの思いで告白して、その日のうちに抱かせてもらって、その日俺は天にも昇る幸せを感じていたけど、数日が過ぎふとある事に気がついてしまった。

そもそも・・・俺とヒロさんは恋人同士なんだろうか。
恋人同士なら、当然デートなんかもするものなんだろうか・・・・。

当時、俺には年の近い友人というものが全く居なくて、話したり相談出来る相手は大概年上の人ばかりだったから、世の17歳がどんな恋愛をしているのか、まるで海の向こうの話くらいに分からずにいた。
それもそのはず、同じ年頃であれば大抵は高校に通っていて、毎日バイトばかりしている俺とは生活も価値観もきっとすごく違う。
つきあう相手も、男だったり、4歳も年上だったり・・・しないんだろうし。

2週間の間、俺はほぼ毎日ヒロさんの家に通っていて、バイトとバイトの間を縫うようにしてちょっとでも時間を捻出しては、会いに行った。
その名目は「勉強を教えてもらう」事だったから、家やバイトの空き時間には必ずヒロさんから出された宿題をし、テキストを読み、過去問に取り組む。

会いに行く名目があるのは良かったが、一緒に居ても俺は勉強、ヒロさんは俺の勉強を見つつ自分の卒論の準備が忙しくて、ちっとも色っぽい雰囲気にはならない。

目の前で、構文の説明をするヒロさんの口元、柔らかそうな・・・いや実際にとても柔らかかった唇を見つめる。

キスしたい。

ヒロさんに触りたい。

もう1度、アノ時のゾクゾクする声で、俺の名前を呼んで欲しい。

「・・・野分、お前ちゃんと話、聞いてるか?」

「あ、ハイ・・・大丈夫です。」

「・・・お前さ、ちょっとバイト減らしたら? せめて大検合格するまで・・・とかでもいいからさ。でないと絶対体壊すぞ。」

眉毛を下げて、俺を心配そうに見つめるヒロさんが、きれいで可愛いくて、俺は気がつけば吸い寄せられるようにその唇を奪っていた。

「んん・・・っ・・・ン・・・。」

なかば無理やりに舌を差し入れ、応えてくれないヒロさんの舌に擦りつけると、ヒロさんの喉から鼻にかかった可愛い声が漏れる。

それだけで堪らなくなる。

欲しい。欲しい。欲しくて、欲しくて・・・おかしくなってしまいそう。

抑えきれなくて、その勢いでヒロさんを床に押し倒し、強引にその細い体の上にのしかかった。
俺の猛ったものをヒロさんの膝に押しつけると、見る間にその頬が赤く染まっていく。

本当は、次に抱かせてもらえるなら、ちゃんと恋人同士のように、外で待ち合わせをしてどこかヒロさんの行きたい所に行って、いっぱい楽しんでもらって、もっと俺を好きになってもらってから抱きたいと思っていた。
けれど、理想のデートは俺にはまだ非現実的過ぎて、結局空想すら出来ずにいる。

「ヒロさん・・・ヒロさん・・・ヒロさん・・・!」

ボタンを外すのももどかしくて、焦る気持ちを必死に抑えながら、ヒロさんの服を脱がしていく。俺の下で耳まで真っ赤にして目を閉じる可愛い彼の、裸が早く見たい。あちこちいっぱい触って、舐めて、吸って・・・あの色っぽい声を聞かせて欲しい。

ごめんなさい。ガキっぽくて。
あなたに相応しい男になりたいと思いながら、自制心すらコントロール出来ない。

痛いくらいに張り詰めた俺の股間にそっとヒロさんの手が触れた。

「いいよ。こんなんじゃ苦しいだろ。お前も脱げ・・・。」

ヒロさん、ヒロさんも俺を欲しいと思ってくれていましたか。
2週間の間、俺に触れたいと何度思ってくれましたか。

俺はヒロさんのシャツのボタンを夢中で外しながら、心の中で質問を繰り返す。

 

 

ーーーーーーまだ、ヒロさんからの愛情に気付けなかった・・・17歳の頃。

 

 

 ◇ おわり ◇



お題提供
『みんながヒロさんを愛してる』同盟様

「理想のデート」 でした。

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