『一年の計は元旦に・・・』





『一年の計は元旦に・・・ その1 』


年が変わる、その瞬間までに帰りたい、その一心で寒空の下、必死にペダルをこぐ。
いつもならばこの時間帯になれば殆ど人通りのない住宅地に入って、今日は初詣の為か歩いている人達と何組かすれ違った。
そう、今夜は特別な夜だからだ。

師走に入ってから、毎日本当に忙しくて、ろくに家に帰れなかった。
そんな慌ただしかった病院も年の瀬が迫るうち、徐々に落ち着いてくる。年内で退院する人達や、お正月一時帰宅する入達を送り出した後は、小児科の病棟も余程の重篤な症状を抱える子供達だけが残る事となった。
一般外来も終わったし、これでしばらく救急の事だけ心配していればいい。

医局で一人蕎麦のカップ麺をすすり、ここで年越しになるのかとぼんやり考えていたところに、当直のドクターから「草間もたまには家で年越しさせてやるから帰っていいぞ。」と声をかけてもらった。
慌てて腕時計を確認すれば急げば12時にギリギリ間に合うかもしれない時間で、俺は急いで病院を後にした。

コートの上から顔半分埋もれるようにマフラーを巻いても、耳が千切れそうなくらい寒い。
寒さが厳しくなるにつれ、そろそろ自転車はよそう・・・と思っていたけれど、今日は自転車で来ていた事がありがたかった。初詣の為に臨時電車が出ているが、どうせ混み合っているし、こんな日にはタクシーだってつかまらない。
マンションが見えてくるあたりで再度時計を確認する。時刻は11時50分。近所の寺の除夜の鐘が鳴り始める。

やばいな、結構ギリギリだ。
万が一の事を考えて携帯電話を取りだし、ヒロさんにコールする。
一瞬寒さを忘れるような、あたたかいヒロさんの声にほっとさせられた。

マンションの自転車置き場から急いでエントランスに駆け込む。2機あるエレベーターの両方のボタンを押してもどちらもなかなか降りて来なくて気ばかりが焦る。

もう少し。
あと少しで・・・
ヒロさんに会える。

エレベーターが待てなかった俺は、携帯電話を握りしめたまま階段を駆け上がった。

息があがる。ちょっと前まであんなに寒かったのに、走ったせいで火照るくらい顔が熱い。
ようやく自分の家のドアまで辿り着いたところで、うっかりガスメーターの扉を蹴って大きな音を立ててしまった。
電話の向こうで、物音を不審がったヒロさんがこちらへ向かってくるのが分かる。

目の前で開かれる扉。
現れた愛しい人の姿に、俺は我慢しきれなくて、そのまま玄関の中へと彼を押し込むとドアが閉じるのと同時に驚きに薄く開かれた唇を塞いだ。

その瞬間部屋の中から漏れ聞こえてくる音で新年が明けた事を知らされる。

良かった、間に合った。
嬉しさと安堵で、ヒロさんの体をきつくきつく抱き締める。

「何だよ、今夜は帰れないんじゃなかったのか?」

「手が足りていたので帰らせてもらえたんです。明日は非番ですし、初詣にも一緒に行きましょう。」

「・・・・うん。」

キスの後、ヒロさんの顔を確かめると、キスの余韻のせいか、ほんのりと頬が染まっていて、赤く濡れたままの唇があまりにも艶っぽく光っていた。

「・・・・このままヒロさんを俺の部屋に連れて行っちゃいたいんですけど、ダメですか?」

耳元で囁きながら、ボタンを1つ外したパジャマの胸元に手を差し入れ胸の先を指で撫でると、腕の中のヒロさんの体がピクンと揺れた。

「・・・ダメって言ったら、やめられんのかよ。」

「やめませんけど。」

布越しに指の腹でチョイチョイとくすぐれば、小さな胸の粒が勃ち上がるのが感じられた。

「・・・あッ・・・!・・・じゃ、聞く・・・な・・。」

「はい。」

すがるみたいに抱きついてきた彼の体を勢いよく抱き上げてそのまま俺は自室のベッドへと運び込んだ。
シーツの上にそっとその体を下ろして部屋の灯りをつけると、ベッドシーツが真新しいものに取り替えてある事に気がついた。お正月を迎えるにあたって、ヒロさんが準備していてくれたのだと思うと胸が熱くなる。
そして、その真新しいシーツの上で大好きな彼を裸に出来る喜びが胸いっぱいに拡がっていった。

「シーツ、ありがとうございます。」

手早くパジャマのボタンを外しながらそう言うと、ヒロさんは恥ずかしそうに瞼を閉じて横をむいてしまった。

「別に・・・こういう事しろって意味で新調したんじゃねーからな。それと・・・電気つけんな。」

「わかってます。でも・・・この新しいシーツにヒロさんの匂い、いっぱいつけていって下さいね。それと電気は・・・消しません。」

だって、久しぶりに抱くヒロさんの可愛い姿をちゃんと見たいんだ。


 ◇ 続く ◇




『一年の計は元旦に・・・ その2 』


パジャマの袖を抜き取り上半身を晒せば、まだエアコンをつけたばかりで部屋が肌寒いせいか、ヒロさんの肌に鳥肌が浮いているのに気付く。

「ごめんなさい、寒いですよね。」

「・・・平気・・・。」

小さく勃ち上がった胸の尖りを口に含むと、髪の毛に差し入れられたヒロさんの指が悩ましくうごめく。
濡れた舌先をやんわりと形に添って這わせ唇で先端を挟む様に食むと、口の中で丸く硬くなっていくのが分かる。もう片方を指で弄りながら吸い上げ、軽く歯を立てた。

「あ・・・・ああっ・・・・や・・・。」

唇を離せば、吸われて赤く染まり濡れそぼった可愛らしい突起が現れる。白い肌の上に花が咲いた様に鮮やかな赤。

「野分・・・・こっちも・・・。」

ねだられるままにまだ熟していないもう片方も口に含む。

いつにないヒロさんの積極性を嬉しく思いながら、それだけ彼に寂しい想いをさせていたのだろうな、と感じた。
帰ってくるなり寝室に連れて行かれて、服を脱がされ、胸にしゃぶりつかれても、ヒロさんはされるがままに体を投げ出し、俺が与える愛撫を全身で受け止めてくれている。

「ヒロさん、気持ちいい・・・?」

「・・・ン・・・・。」

ヒロさんの手がそっと俺のジーンズの前に触れてくる。
勃てる前に脱いでおけば良かった、と思えるくらいに、もうギンギンになってしまっていて、少し恥ずかしい。
固い布越しに彼の指が、俺の形をなぞっていく。その、もどかしいような感触が堪らなくて、俺は腰をその手に押しつける様にして揺らした。

「舐めてくれませんか。」

組み敷き見下ろすヒロさんの顔は、あまりにも扇情的で、煽られるままに乱暴にしてしまいたくなる衝動を抑えるので必死だった。艶っぽい伏し目でヒロさんは俺の顔を見上げ、小さく頷く。
体勢を入れ替え 、仰向けになった俺の上に半裸のヒロさんが跨った。
ベルトのバックルとジーンズの釦を外し、前を開けば下着を押し上げる俺のものが現れる。
ヒロさんはそれを下着の上から数回擦って形を確かめてから、ヨイショとばかりに俺のジーンズを引き下ろした。すぐに下着も下ろされて、猛った俺のそれにヒロさんのきれいな指がそおっと絡みついていく。

「やりにくいから・・・あんまりジロジロ見んな・・・。」

「・・・見たいです。ヒロさんのエッチな顔。」

俺の言葉にヒロさんはちょっとだけ眉を寄せて、それでも俺の見つめる目の前で俺自身に軽く口づけ、そのまま深く口の中へと頬張ってくれた。
連勤でここ何日かシャワーしか浴びられてなくて、ちょっと申し訳なかったなと思いつつ、躊躇もなく舌を絡ませ、唇を使って扱いてくれるヒロさんの口元をじっと凝視する。

会えない間、何度この姿を頭に思い描いただろう。
仮眠室で自慰までは出来ないから、布団の中で慰めるように股間に手を挟んで、ヒロさんの可愛い姿を繰り返し夢想した。イメージの中での彼も、すごく大胆でいやらしく俺のものを舐めてくれていたけれど、目の前の本物のヒロさんはその数倍、いや数十倍・・・は、エッチだ。

時折覗く赤い舌先。
唾液と俺の体液に濡れた唇。
何もかもがどうしようもなく俺を誘う。

「・・・ン・・・ッ・・・ヒロさん、もう・・・。」

こみ上げてくる射精感をそっと伝えれば、なお彼は必死に舌を動かした。
裏側の筋を下唇で擦り、ひたすらに咥えたまま頭を上下させれば、淡い色合いの髪が忙しなく揺れる。

両手で彼の頭を掴み、俺はその口の中へと欲望を吐き出した。

溜め込んでいたせいで多分酷く濃いそれをヒロさんが無理して飲み込んでしまわないように、すかさずティッシュを口元へと差し出す。彼は一瞬迷った顔をした後、素直に俺の手のティッシュの中へと白く濁った体液を吐き出した。ねばつくそれがヒロさんの形のいい唇に絡みつき、細い糸をひく姿に、また腰のあたりが熱をもってくる。

「次はヒロさんの番ですよ。」

腰の辺りに跨った彼の細いウエストを掴んで手で胸の上まで引き寄せ、中腰に立たせるとパジャマの下を引き下ろした。ヒロさんの黒いボクサーブリーフの前は少し濡れていて、まだ何も触れる前から彼が感じてくれていた事が分かる。

太股の付け根から指を差し入れ、半勃の彼のものをそっと握りこむと、彼はため息のような切ない声を漏らした。


  ◇ 続く ◇







『一年の計は元旦に・・・ その3 』


「・・・・あ・・・やだ・・・アッ・・・・。」

狭い下着の隙間から手を差し入れ、濡れたヒロさん自身の先端を指先で撫でる。

「・・・バカ、そんな痴漢みたいな触り方ヤメ・・・。」

俺は構わずに包み込む様に彼の性器と双袋を手で揉み込んだ後、さらに手を押し込むとまだ閉じたままの窄まりを指で押した。

「嫌っ・・・アッ・・・野分っ・・・・!」

「可愛い・・・ヒロさん・・・。」

下着のウエスト部分を押し下げ、すっかり勃ち上がった彼のものを取り出す。
ヒロさんは仰け反る様に胸を張り、片手を後ろ手に俺の腹の辺りについて、何とか体を支えていた。

腰を顔のすぐ傍まで引き寄せ、硬くなった芯に手を添えて根本から先端へとべろっと舐めあげれば、ヒロさんはいやいやをする様に頭を振った。

「アア・・・ッ・・・あ・・・あ・・・。」

ヒロさんの引き締まった小さなお尻を撫でながら目の前に突き出された彼自身に舌を這わせる。

「野分・・・も・・・ツライ・・・。」

体を支えていたヒロさんの肘がカクンと折れて、そのまま仰向けに倒れてしまった彼の体を追いかける様に俺は上体を起こすと、そのまま彼の上に覆い被さり、中途半端に腰に絡みついている下着を取り去った。

「俺も、早くヒロさんが欲しいです。」

ベッドサイドの引き出しからローションのボトルを取り出し、手早く手の中に塗り広げると、その手を双丘の狭間に差し入れる。ぬるりと滑る指を2本潜り込ませると、その圧迫感にヒロさんが小さく呻いた。
痛かったかな、と様子を見ながらゆっくりと指を抜き差しさせると、ヒロさんは気持ち良さそうに腰を揺らめかせ始める。

「あっ・・・あ・・・そこ・・・ンンッ・・・!」

内側を掻き回す指先が、彼の弱い場所をえぐる度に、真っ白な肢体が大きく跳ねて、悩ましく乱れては俺の理性を削っていった。

「まだ・・・少しキツイかもしれませんが、いきます。」

挿入の寸前に自分のものにもローションを塗りつけ、指で押し開いた入り口に先端を添え、ぐっと腰を進める。ヒロさんは一瞬固く瞼を閉じて開かれていく痛みに耐えると、きゅうっとあそこを締め付け、とろけるような甘い声で啼いた。

「ああ・・・・あン・・・のわ・・あっ・・・あっ・・・・。」

「ん・・・すごい・・・熱い・・・イイです、すごく・・・イイ・・・・。」

中を探るようにしてヒロさんのイイ箇所を突けば、彼の表情が苦痛から快楽へと変わる。
先走りに濡れた彼のものを手で扱きながら、俺はゆっくりと大きく腰をグラインドさせていく。

「アーーーッ・・・ああ・・・野分っ・・・野分っ・・・!!」

ずっと、ずっと焦がれていた体。
ヒロさんを抱きたくて、抱きたくて・・・・疲れて限界まで追い詰められる度に頭の中はその事でいっぱいになって・・・。

「あっ・・・野分ーーーーーッ。ダメ・・・あっ!あっ・・・イク・・ああっ・・・。」

「まだ・・・・・・もう少し我慢して下さい。・・・もっと気持ち良くしてあげますから・・・。」

「な・・・もっと・・・って・・・無理・・・や・・・アアッ!」

繋がったままで彼の体をひっくり返し、四つん這いにさせると、両手で双丘を押し開いて、グッと根本まで自らのものを突き入れる。背後から回した手で爆ぜる寸前まで高まったヒロさんのものを握ると、鈴口を指で塞いで、イケないよう押しとどめた。

「アーーーーア・・ア・・・嫌ぁぁ・・・。」

崩れそうになる腰を掴んで引き寄せ、激しくピストンを続ければ、二人のぶつかり合う肌がいやらしい音を立てて鳴り、血流がものすごい勢いで下半身に集まっていくのを感じた。

「ア・・・・深い・・・そんな・・奥まで・・・・やっ・・・・アアアアッ!」

「ヒロさ・・・ん・・イイッ・・・・あっ・・・イイ・・・・もう・・・。」

「俺もッ・・・あっ・・・も・・・イキた・・・い・・・・アッ・・・。」

強く握り込んでいた指を開放して、上下に擦りながら激しく後ろから責めたてると、ヒロさんはシーツに顔を押しつけたまま全身を震わせて達した。と、同時に俺も彼の体内に思いの丈を全て注ぎ込んだ。

繋がったままゆっくりとシーツの上に体を横たえると、まだ小さく痙攣し続けているヒロさんの体を抱き締める。

「・・・すみません・・・余裕なくて・・・直に出しちゃいました・・・。」

「・・・・・いい・・・別に・・・。」

心地よい倦怠感に全身を包まれながら、腕の中のヒロさんの汗に濡れた髪の毛に何度も何度も口づけを落とした。

「・・・疲れてんだろ、もうそのまま寝ろよ。」

「もっと・・・欲しいです・・・。」

あたたかいその体を離し難くて、抱き締める腕に力を入れようとしても、だんだんと瞼が重く閉じてくる。

「・・・・・・いいから、寝ろ。」

ヒロさんに宥めるみたいに腕をとんとんとされて、あっという間に睡魔が襲ってきた。
幸福で、気持ち良くて、俺はそのまま眠りの淵へと落ちていく。






「・・・野分?眠ったのか・・・?」

ちょっとごねていたくせに、結局すぐに寝てしまった恋人の腕の中で、弘樹はゆっくりと身を捩ると力を無くした愛しい者のそれを体内から引き抜く。
振り返れば、そこにはもう先ほどまでの自分を激しく求めた荒々しい男の姿はなく、邪気のない子供の寝顔があった。
裸のままの恋人に布団を掛けて、風邪をひかないようにエアコンの設定温度を少し上げる。

風呂で体を流したら、もう1度ここに戻って一緒に眠ろうと弘樹は思った。
今年は去年よりちょっとでも傍にいられたらいい。
ずっと、なんて贅沢は言わないから、ほんの1日でも、1時間でも多く、一緒に・・・
そしてこいつの安らかな眠りがちょっとでも長くありますように、と。

少し遅い時間まで二人でゆっくり眠って、雑煮でも食べて、それから初詣にでも出かけようと思う。

共に眠り、目覚め、一緒にご飯を食べて、二人で出掛ける。

一年の計は元旦にあり。

こんな安らかな一年が俺達に訪れますようにと、眠る恋人の寝顔に弘樹はそっと願った。


 ◇ おわり ◇


 一年の計は元旦に・・・    2010/01/02~01/04  連載
   



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