『夜の散歩』 |
『夜の散歩 〜夜の営み編 1〜 』 「・・・せめて、どっちかひとつにしろ。」 俺の言葉に野分は本気で腕組みして目の前の物を凝視している。絶対ばかだ・・・こいつは。 目の前に並べられているのは、さっき買って帰った・・・いわゆる避妊具。慌てた俺のせいで両手に持って吟味していた物を2個とも買って帰る羽目になったが為に、今度はここに来て悩んでいる・・・という訳だ。 それにしても、明日はどっちも仕事だっていうのに、しつこく食い下がる野分に絆されて「絶対に1回だけ」という約束で了承したまでは良かったが、よく考えてみれば、その「1回」とは野分が果てるまでを言うんだよな・・・・俺がイッた回数では多分ないのだろう・・・じゃあ長いじゃねぇか!何時になったら寝れるんだよ!そんな状況だってのに、こいつはいったいいつまでそうやってゴム並べて悩んでるつもりだ。 「・・・・決まったら起こせ。俺は眠い。」 悩む野分をほっぽって、肌掛け布団にくるまって横になろうとすると、すごい勢いで布団を引っ張られる。 「ヒロさん、寝ちゃダメです。約束したじゃないですか、俺と新製品試してくれるって。」 「どーでもいいよ。そんなもん。お前・・・この間もローションの新商品を通販で見つけたから試させろとか何とか言って、メントール入りのローション、あそこに塗り込みやがって・・・。おかげで朝までスースーして大変でございました!!・・・お前はそのつまらん好奇心やら探求心とやらをもっと他の有意義な事に使いやがれ!」 「あれは夏用のローションだから、それでいいんですよー。それにヒロさん、いつもよりいっぱい感じてて・・・・痛っ。」 俺は目の前にあったスキンの化粧箱をひとつ掴むと野分のアホ面めがけてぶん投げる。箱はきれいに野分の額にクリティカルヒットを決めた。鬼の上條のコントロールを舐めんな。 「・・・・で、どっちにするんだ?」 「こっちにしてみます。ゴム製じゃないやつ・・・水系ポリウレタン製の。」 「はいはい。」 野分はさっそく箱を開くと中身をびらびらっと引っ張り出し、几帳面に1個だけミシン目で切り離す。 そしてベッドのシーツの上に並べられた化粧箱をサイドテーブルに片付けると、意気揚々と俺の布団を剥がしにかかった。 唇を塞がれながらパジャマの下と下着とを一緒に引きずり下ろされ、俺は慌てて野分の手を制する。 「お前・・・・っ・・・その煌々と付けた電気を消せ。せめてそこのスタンドだけとか・・・。」 「でも俺、これ使ってヒロさんがどんな風に感じてくれるのか、しっかり見たいんです。」 「しっかり見る・・・って、何も部屋全体明るい必要はないだろう。落ち着かないし、何かやだ・・・・。」 「大丈夫・・・ヒロさんのココは、もうすっかりその気みたいですよ。」 野分の手の中に包まれて、ゆっくりと擦られただけで、体中の血液も俺の意識もそこへ集中していってしまう。 先端の割れ目から滲み出た透明の滴をちゅっと吸い出されて、思わず腰が浮き上がった。 「・・・やっ・・・電気・・・。」 「今日はダメです。ヒロさんの全部・・・見ながらさせて下さい。」 野分から俺が見える、という事は必然的に俺からも野分が見える。 視線をそっと自分の下肢にやると、顔を隠す野分の長い前髪の間から見える光景にごくりと喉を鳴らした。 俺自身に絡みつく長い指。 人差し指の腹で先端の丸いカーブをなぞり、先からたらたらと染み出てくる体液を指先ですくいとっては全体に馴染ませるように塗り拡げていく。 くびれの部分にぐるりと舌を這わせた後、幹を甘噛みされて、もどかしさに腰が震えた。 「のわ・・・!ああっ・・・あ・・・。」 もっと強く吸って欲しい。 ぐちゃぐちゃになるくらいきつく擦って欲しい。 俺の心の声に応えるように、野分はそれを口腔深く咥え込んだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『夜の散歩 〜夜の営み編 2〜 』 野分の口の中が熱い。 唇全体で上下に擦りあげられ、弱い裏筋を舌で執拗に攻められて、堪らなくなった俺はそこにある野分の髪の毛をぎゅっと掴んだ。 「あっ・・・あっ・・・・あ・・・あんまり強くしたら・・・あああっ!」 こみ上げてくる快感に下肢の緊張が高まり、もうちょっと・・・というところで野分は口を離した。今にもはじけそうになっている俺自身に愛おしそうに頬ずりして、片手でゆっくりと扱きながら、今度は奥へ指を滑らせていく。 達する寸前に止められた事で普段より敏感になっている全身が、震えながら野分の指の行方に集中していた。それを知ってか知らずか、野分は双袋を柔らかく数回手の中で揉んで、その指をさらに奥へと忍び込ませた。 「野分・・・も・・・あっ・・・。」 腰で燻る行き場のない熱に、ねだるように腰をシーツから浮かせると、野分は満足そうに笑みを浮かべて、まだ硬く閉じたままの入口の襞を指の先で押すように触れる。 「ヒロさん、今、すごい可愛い顔してます。えっちで・・・とてもキレイですよ。」 野分は俺のものを扱く手を休めないまま、サイドテーブルの上のローションの容器を手にとると、器用に片手でキャップを外した。 半透明でとろりとしたそれを手のひらにとって、内股へと塗り込まれる。 良かった・・・今日はスースーするあれじゃない。 ローションでたっぷりと潤した指をゆっくりと回転させながら挿入される。 「あああっ・・・あっ・・ああっ・・。」 指一本でも、期待していた内壁には存在感が大きくて、切ない疼きに野分の中指をぐっと締め付けてしまう。 「・・・ヒロさん、気持ちイイんですね。見てるだけで・・・たまんないです。」 欲にまみれ、声を掠らせた野分の遠慮のない視線にますます躰の熱が上がっていくのを感じた。 俺の内側をぐいっと掻き回した指先が、今度は探るように襞を擦っていく。甘い予感に膝をすり合わせ、ぎゅっと瞼を閉じて耐える。 「・・・ここ。」 「ーーーーやっ!!アッ・・・アアア・・あーーーー。」 野分が探り当てた箇所は、俺の一番弱いトコロで・・・ここを執拗に弄られると、尋常じゃないくらいの快感に襲われて、もう俺は叫ぶ以外どうしようもなくなってしまうのだ。 「ヒロさんの大好きな場所です。ここ、こうやって指で弄るのと、俺ので抉られるのとどっちがいいですか。」 「あっは・・・・はぁ・・・野分のっ・・・野分のがイっ・・・やあっ・・・。」 「俺の?指ですか、それともこっちかな。」 こみ上げる声を殺したくて噛んでいた指を野分の張りに導かれる。 パジャマの布地を押し上げるそれを手のひらに包み込むと、野分が小さく呻いた。 「こっち・・・こっちがいい。」 嬉しそうな顔で頷いた野分の表情にまた煽られながら、俺は野分のパジャマを両手で下ろす。下着越しでもはっきりと形が分かる程に猛った野分の形に添って指を滑らせながら、ゆっくりと黒いブリーフを脱がせた。 牡の香りがするそれを手で扱きながら野分がスキンの袋を破ってくれるのを待った。手の中の野分のものは時折びくびくと震えている。 「ヒロさんが付けて下さい。」 むろんそのつもりで待っていたのだけれど、改めて目を見て言われると恥ずかしくて顔を背けてしまう。しかもそんなじろじろ見られながらこれを扱った事などなくて、変に緊張してしまいそうだ。 先の液だまりに空気が入らないよう少し捻ってから野分の先にそれをかぶせ、くるくると伸ばしていく。 いつもならゴムが途中で引っかかったり、体毛が絡まって往生するのにそれが無くさらっとした触り心地にちょっと驚いた。 「ああ・・・きつくなくていい感じです。Lまでしか無かったから心配したんですけど、ちょうどいいかも。」 「へぇ・・・。」 「じゃあ今度はヒロさんが使い心地をたっぷりと味わって下さい・・・ね。」 と言うやいなや野分に足首を掴んでひっくり返され、正面からのしかかられると、いきなり襞を分け入り野分のものが押し込まれてしまった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『夜の散歩 〜夜の営み編 3〜 』 「・・・・っ・・・ああっ・・・アア・・・。」 一度には受け入れきれない大きさに、いつもこの瞬間は少し緊張する。 野分はいつも、もう十分、勘弁してくれって言いたくなるくらいしつこく解してくれるから、怪我をするような事にはならないけれど、それでもうまく呼吸を合わせて力を抜かないと、俺も野分も痛い思いをしなくてはならない。 ぬるりと入り込んできた先の太い部分を受け入れられれば、後は緩やかに根本に向かって少し太くなっているだけだから、大丈夫。息をゆっくりと吐いて体の強ばりを逃すと、徐々に腰を進めてくる野分の動きを確かめながら力を調節していった。 「奥まで入りましたよ。ヒロさんの中、熱くて気持ちいい・・・。」 俺の上半身をぎゅっと抱き締め、野分が感嘆のため息をつく。 僅かに寄せられた眉間、薄く開かれた唇、黒々とした瞳は少し伏せられた瞼と長くて濃い睫毛に半分程隠されて・・・それでもあまりの色っぽさに直視し辛い。 いつもはもうちょっと明かりを落とした中で抱き合うから、あまり気にしてなかったけれど、最中こんなに野分がじろじろと俺を見ているなんて知らなかった。 顔に始まり、首もとに、胸に、腹部に、そして繋がり合ったそこに・・・野分の視線が移動する度、愛撫同様ピリピリとした甘い痺れが全身を支配していく。 後始末が面倒だから、余程の時じゃない限り野分にはスキンをつけてもらうようにしている。それに対して野分が不満をもらした事はないし、それこそヤツが10代の頃から頼んである事だから、多分自然と習慣になってくれているはずで・・・。 問題がひとつあるとすれば、薄くても遮断物があるせいで、ただでさえ俺の数倍の持久力のある野分のものは、なかなか達かない・・・・。 散々揺す振られて、突き上げられて、声が出なくなるまで喘がされて、意識が朦朧としてくるまで貪られて・・・・ようやく、なのだ。 だから、挿入の瞬間のスムーズさに正直ちょっと驚いた。 異物感が少なく、滑らかで・・・悪くないかも。 こんなものどれ使ったって一緒だろう、と思っていたけれど、そうか素材でこれだけ違うんだな・・・・・。 そんな事を頭の中で巡らせていたら、予告なく野分が動き始めた。 「やあっ・・・アッ・・・あああ・・・。」 いきなり弱い部分にぐいと擦りつけられて、体が大きくずり上がる。 いつもよりダイレクトに伝わる気がする野分の体温とその形状。腰を掴んで突き入れられる度に我慢出来なくて声がこぼれ落ちた。 「んっ・・や・・・っ・・・野分の・・あつ・・・い・・・・。」 ベッドのヘッドボードに向かってどんどんずれていく俺の頭がぶつかってしまわないように野分の手のひらが頭を庇う。そうしている瞬間も休む事なく野分は律動を続け、俺は何度もこみあげてくる快楽の波に、野分にしがみつく事で耐えた。 「ヒロさん、かわいい・・・すごく、かわいいです。すき・・好きです。好き・・・。」 「のわき・・・っ・・・あっ・・あっ・・ああああ・・・・。」 野分の囁く声にいちいち反応して、情けないくらい体も心も震えてしまう。 挿入の瞬間、弾けた俺の吐精で濡れた腹部に野分の体が擦りつけられ、重なる体の重みが心地よくて、野分を受け入れているそこに思わず力がこもった。 「・・・ううっ・・・ヒロ・・さんっ・・・俺もう・・・。」 「・・・・・・野分っ・・・野分っ!」 ようやく限界が近づいたらしい、野分が腰のグラインドを大きく変える。体の奥深い場所を力強く突き上げられて、俺の目尻からつうっと涙がつたう。 涙に気がついた野分に頬をぺろりと舐められて、俺はきつく閉じていた瞼をゆっくりと開いた。 そこには大好きな野分の優しい顔がまっすぐに俺を見下ろしていて、恥ずかしさよりも嬉しさや切ない気持ちで胸がいっぱいになって、その首に縋り付く。 再度激しくなる動きに耐えるべく、俺は抱きつく腕に力を込めた。 苦しくて、あったかくて、気持ちよくて・・・・・ 野分が果てるよりも俺が意識を飛ばしてしまう方が先だった。 ◇ 続く ◇ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『夜の散歩 〜夜の営み編 4〜 』 真っ暗な部屋の中で、俺はふと目を覚ました。 枕元に手を伸ばし手に当たった野分の携帯電話の液晶画面で時間を確認する。 午前4時をちょっと過ぎたところだった。 暗い中、様子を伺うと、俺の体は野分の腕にがっちりとホールドされていて、その野分は表情こそ見えないものの穏やかな寝息で熟睡している事が分かる。 またやってる最中にそのまんま寝てしまったらしい・・・唯一自由になる右手で自分の体を探るときちんとパジャマを身につけていて、野分の世話になったらしいと分かる。 そして当の野分は下だけパジャマを履いて上半身は裸のまま、眠っている。着替えの途中で力尽きたのか、面倒でそのまま寝たのか分からないけれど、素肌に直接顔を埋めるこの体勢は結構ツライ。 野分の体臭とか、肌の質感とか、意識しないようにすればする程気になって、恥ずかしくて堪らなくなってきた。 しかもまだ体に残る数時間前の名残りは生々しく、脚の間には野分を受け入れた時の違和感が残ったままで・・・。 ヤバイ・・・。 このままここにこうしていたら、のっぴきならない状況になりそうだ、と感じた俺は野分の腕からどうにかして逃れようと、ごそごそと体をずらし始める。 とりあえず体の上にかかった腕を持ち上げて、そーっと布団の上に下ろし、かにばさみ状態で挟まれた両足は野分を動かさないように注意しながら、1本ずつ抜き取った。 ようやく自由になった体で静かにベッドから降りると、僅かに野分が身動ぐ。 さっきまで俺が寝ていた空間を手のひらが探り、空をきってそのままシーツの上にぱたんと落ちた。 何、今の。 こいつ、寝ながら俺の事確認してた? そう思うとぽかんと空いたシーツの上で取り残された野分の左手が可哀想に思えてくる。 本当は自分の部屋に帰って熱を鎮めてから寝直そうと思っていたのに、今すぐその腕の中に戻ってやりたくて堪らなくなってきた。 となると・・・・トイレか風呂場か・・・・。 行為の後、清めてくれているとはいえ、そのまま仕事に行く訳にもいかないだろう、と考えシャワーを浴びる事に決める。そのついでに1回ぬいたらもうちょっと落ち着いて眠れるだろう。 賃貸マンションでこんな時間に水を使うのは少々気が咎めたが、短時間で済ませるつもりで服を脱ぎ捨て浴室に入る。 熱めに設定したシャワーでざっと体を流した後、シャワーヘッドを壁のラックに固定し、体に湯が当たるようにしたままで、中途半端に勃ちあがった自身を握る。 当分野分に触れていないならともかく、数時間前に散々やって、何度もイかされて、それなのに野分の体を意識しただけでこれなんて・・・。 体に燻った残り火を熱いシャワーで洗い流し、着替え直した俺はもう一度野分の部屋へと戻ってきた。 野分は俺が出て行った時のまま人1人分の空間を抱くようにして眠っている。 俺はその腕をヨイショと持ち上げて、その下に潜り込むと再び目の前の厚い胸に頬をくっつけ身を寄せた。すると、まるで待っていたかのように野分の腕がぎゅっと俺の体を抱き寄せ、片膝が俺の脚の上に乗せられる。 「・・・ロ・・さ・・・。」 呼ばれた気がして頭をもたげ、野分の寝顔を凝視するが起きた気配はなく、それが寝言だったのだと理解する。 可愛い。 ・・・結局俺はどうしようもないくらい、こいつにべた惚れで、何だかんだ文句言いつつも最後にはどんな我が儘であっても聞いてしまう。 そんな自分に嫌気がさすどころか・・・野分ペースで振り回されている事をどこか楽しんでいる節もあって、結局これが「惚れた弱み」ってやつなのかな・・・と思った。 「野分。」 起こしてしまわないように声を出さずに口の動きだけで名前を呼んで、その大きくて暖かい懐に顔を埋めると、再び野分の待つ夢の世界へと戻って行った。 ◇ おわり ◇ お題提供 『みんながヒロさんを愛してる』同盟様 いつものデート でした。 |
2009月6月3日〜6月8日連載 |