『新月』 |
興奮して、息があがってきている野分の大きな体が、俺の上体の上にのしかかってきた。 「・・・・っ・・・うわ・・・。」 しばらく自分でも触ってなかったそこをいきなり吸いあげられて、ダイレクトに腰を震わせる巧みな動きに思わず声が洩れた。
おそらく溜まってもいるだろうし、異常な程恋い焦がれた野分からの愛撫に、自分でも変だと思うくらい全身の感度が高まっている気がした。 「ダメ・・・だめだって・・・ああっ・・・もっと、ゆっくり・・・。」 俺の言うダメを睦言くらいに思っているのか、野分も余裕が無いのか、ちっとも加減してくれなくて、あっという間に俺は昇りつめてしまう。吐精を促すように野分が硬くした舌で裏側の筋を強く辿っていき、くびれた部分を唇で強く食んだ。 「出るっ!・・・アアッ・・・はあっ・・・あ・・。」 先の部分だけを口の中に収めた状態で、口からはみ出した部分を指先で扱かれ、俺は野分の口中に果てた。吐き出す勢いがおさまるまで野分は俺のものを咥えたまま動かず、全て飲み干した後、一滴も漏らしたくないかのように、先端の割れ目に舌先を突っ込んで更に吸い出そうとしている。 「ヒロさんのイク時の顔、久しぶりに見ました・・・。やっぱりものすごく可愛いです。」 とんでもない事を何て幸せそうな顔で言うんだ!こいつは・・・! くすぐったさと、もどかしさに腰をくねらせる俺の両膝を掴んで、俺の体を横向けに倒すと片足を肩へと抱えあげ、野分が更に屈みこもうとしている事に気付いた。 「ん・・・何・・・・。」 ぐいっと押し拡げるようにして下肢を開かれ、熱い吐息が体の最奥に触れる。ふいに野分がどこに顔を突っ込もうとしているのか分かってしまって、俺は慌てて腰を引こうと力を入れるけれども、がっちりとホールドされていてまったく動けなかった。 「ひゃっ・・・それ、ヤッ・・・!」 後孔に濡れた舌の感触を感じて、びくんと体が揺れる。 襞を分け入って、野分の舌先が体内へと差し込まれる。 いやらしく濡れた音をたてて、野分にそこを舐めまわされる度に、再び前が勃ちあがっていくのを感じた。 「ヒロさんもすごく感じてくれてるみたいで、嬉しい・・・。」 「だって・・・!お前が弄りまわすから・・・。頼むから、もうそれやめ・・・。」 「どうして?こんなに気持ち良さそうなのに。」 「ヤダよ・・・もう舐めんな・・・っ。」 襞を解すようにぴちゃぴちゃと舌を這わせていた野分の唇が脚の根本を掠め、双袋をやわらかく手のひらで揉みながら、半勃ちになっている俺自身にちゅっと口づけた。 「かわいいです。ヒロさんは全身どこもみんなかわいい・・・。」 「そんなトコ褒められたって嬉しくねー。」 「だってかわいくて堪らないです。・・・ここ、普段はこんなに奥ゆかしく窄まっているのに、俺を根本まで飲み込んでくれるんですよ・・・。スゴイし、ホントにかわいい・・・・。」 うっとりと欲情に濡れた声色で囁かれて、それだけでもトロトロにとかされてしまいそうだ。 「ヒロさんが嫌でも、いつもよりしっかり解さないと・・・久しぶりだから狭いです、ここ。」 散々舐めまわして敏感になったそこに、とろっとしたローションを垂らされた。 野分は自分の右手にもローションをたっぷりと塗りたくると、その指で襞の入口を少し擦って、そのまま滑らせるよう内壁へと指を挿入させた。 「・・・ああっ・・・・ア・・・。」 野分の指が体内でくいっと曲げられ、浅い場所にある俺のイイところを掻きまわされる。
ローションをたっぷりと塗り込められて、野分が指を動かす度に、後孔がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。もうおかしくなりそうなくらい敏感になっている内襞を乱暴に擦られて、俺はもうただ喘ぐ事しか出来なくなっていた。 「・・・ヒロさん、気持ちいいですか・・・?」 「ぅ・・・ああっ・・・そんなのっ・・・・見りゃわか・・んだろ!」 体内に埋める指が1本から2本に増やされ、野分の体の下で大きく背中が仰け反る。 「あっあっ・・・イヤ・・・やあああ・・・。」 「まだ狭いです・・・ね。指2本でやっとです。ヒロさん、もっと体の力、抜いて・・・。」 野分の指がぬるぬるするそこを何度も何度も行き来していて、その動きの細かな振動すら、全て激しい快感となって背中を駆け上がってくる。 溺れて息継ぎの仕方を忘れたみたいに、喉を戦慄かせる俺の頬に熱い野分の頬がすり寄せられる。野分だってもう余裕のない状態なのだろう。それなのになかなかひとつになれない焦燥感で目尻からまた涙があふれ出てきた。 「・・・・だ・・大丈夫・・・も・・・いれろよ。」 「まだ無理ですよ。焦らないで・・・ゆっくり、しましょう。」 野分は宥めるように俺の涙を唇で拭い取ると、差し入れていた指をずるりと抜き取ってしまった。抜き取られても、俺のそこはまだ野分の指の形を記憶しているみたいに、ビクビクと伸縮を繰り返していて、それにすら俺は感じてしまう。 仰向けだった俺の体を野分がそっと裏返して、腰を持ち上げるとお尻だけを高く上げた四つん這いにさせられる。そして膝を肩幅程左右に開かれ、背後から俺自身を握りこまれた。 「ヒロさん・・・すごくキレイです。俺の・・・大切な、ヒロさん。」 「あっ・・・あああっ・・・あー・・・。」 もう1度抜いてもらっているのに、野分に触れられただけで、俺のそこは恥ずかしいくらい大きく反応し、また登り詰めようとしているようだった。先端からトロトロと滲み出る先走りを親指で塗り広げられ、濡れた音が部屋の中に響く。 じれったいくらいにゆっくりと手淫を施しながら、再び後孔に2本の指が挿し入れられた。 「やっ・・やぁあ・・・野分っ・・野分っ・・・もっと・・・奥・・・。」 さっきまで掻き回されていたトコロに触れられたくて、我慢できなくて、はしたなく腰を突き出す俺の求めに応えるように、野分の指がぐっと深く挿入された。 「アッ・・・のわ・・・あっあっ・・・ヘン・・・変なんだ・・・体・・あっあああ・・・。」 俺を扱いていた手がシーツに押しつけた胸もとをまさぐり、硬くしこったそこをきゅっと指先で摘まれる。痛いような熱いような快感がこみ上げてきて、注挿を繰り返す野分の指をきつく締め付けてしまった。 「すごい、ヒロさん・・・すごく感じてるんですね。かわいい・・・・。」 片手で交互に胸の尖りを弄びながら、野分の指が俺の中側を押し開くみたいに開かれる。その動きにぐちゅりと湿った音がして、俺は恥ずかしさに顔を枕に押しつけた。 「だいぶん・・・柔らかくなってきましたね。これなら、もういいかな・・・。」 「あっやぁ・・・・早く・・・。」 野分の指が引き抜かれると同時に熱く猛った野分の熱が入り口にぐっと押しつけられ、思わず息を飲んだ。 「ヒロさん、力抜いて・・・。」 「野分ッ・・・・ああああ・・・あーーーー!」 後ろから強く腰を掴まれ、野分の牡が俺の内部へと挿り込んでくる。
ゆっくりと半分程を収めた状態で一度動きを止めると、背中越しに荒い息を整えようとしている野分の吐息が聞こえる。吐息と共に漏れる呻きは、普段話す声よりずっと低く色っぽくて、それだけで達してしまいそうだ。 脚の間から手を伸ばして、最奥を貫かんと先端の中ほどを俺の中へ嵌め入れている野分のものにそっと触れる。きゅっと引き締まった双袋を撫で、根本から指先で辿って限界まで拡げられた俺の入口と野分自身の接合点に触れた。 「俺がヒロさんの中に入っているのが分かりますか?」 「・・・ン・・・。」 「そうしてて下さい。ゆっくりと・・・奥まで進みます。」 野分の芯も、俺のそこもローションでぬるぬるしていて、俺の指先もあっという間に濡れてしまった。 あたたかい・・・野分の手。 「アッアアア・・・・・・ンン・・・ンっ・・・!」 浅い箇所を軽く揺すった後、ぐぐぐ・・・っと野分が押し入ってくる。 「ヒロさん、大丈夫ですか・・・?」 「うん・・・・。」 「全部・・・挿入っています・・・。俺の根本まで・・・・。」 「・・・・のわきの・・・。」 「俺、嬉しくて・・・嬉しくて・・・どうにかなっちゃいそうです。また、こうしてヒロさんを抱けるなんて、思わなかったから・・・。」 俺だって。 最後に俺を抱いたのは・・・17歳の野分だったか。 先の見えない、不安だらけの日々。 失ったと思った。 俺の身体いっぱいに熱を打ちこむ、野分の存在感が嬉しかった。
「ヒロさん、俺・・・ヒロさんの顔を見ながら抱きたいです。・・・嫌ですか?」 「好きにしろよ。」 野分はそっと俺の中から自身を引き抜くと、俺の体を返し大きく左右に脚を開かせて、再び深く貫いてきた。 「うあ・・・・ああっ・・・・・あ・・・。」 「ヒロさん・・・ヒロさ・・・・・。」 自分が乱れているところをジロジロ見られるのは、いつもはあまり好きじゃない。しかもこの体勢だと、とても大きく脚を開かなくてはならず、情けない上に、行為の後2〜3日内股が筋肉痛になるのも嫌だった。 興奮して、情欲に濡れた瞳。 「スゴ・・・気持ちイイ・・・です。ヒロさんのなか・・・とろけそう。」 「・・・んんっ・・・はっ・・・ハア・・・あああっ・・・。」 汗を額に光らせている野分に両腕を伸ばすと、しっかりと抱きとめられて野分の逞しい胸と俺の胸とが合わさった。
深く奥の方まで突かれる度、意識が飛んでしまいそうになるけれど、そうしたくなくて、必死に野分の肩に縋り付いて耐えた。 今日はおかしいくらい体の感じ方が鋭くなっている俺は、そんな野分の静かな動きにすら反応せずにはいられなくて、背中を駆け上がってくる快感にぎゅっと目を閉じた。 「ヒロさん・・・好き・・・。」 体を繋げながら、譫言みたいに繰り返す野分の言葉は、少し前まではあまりにも聞き慣れた科白で、耳にする度にうるさがってみたり、空気のように自然と流したりしてきてたんだよなぁ・・・と思い出す。 「・・・・野分・・・ああっ・・・ン・・・野分・・・野分・・・。」 色んな理由があったにしろ、俺の本当に頼りない涙腺は今も壊れたまんまで、野分に体を揺すられながら、ぽろぽろと涙が頬をつたって、こぼれ落ちていく。 こんなに泣いてて、俺は今日仕事になるんだろうか・・・・・・。 いくら前髪をおろして眼鏡で誤魔化したとしても、変なところ鋭い宮城教授には突っ込まれそうだし、泣きはらして腫れた瞼のまま生徒の前に立つのは忍びない。仕方ない、今日は抜き打ちテストでもして、あまりこっちを見ないでいてもらおう。 俺の涙を指先で優しく拭いながら、笑顔に微かな疲労を滲ませた野分に顔を覗きこまれる。 「だけど、俺・・・安心しました・・・。」 「・・・・え・・・?」 「ちゃんとヒロさんが泣き虫に戻れて。」 「ンだ・・・それ。何かバカにしてんのか・・・。」 「違います。ずっと心配だったんですよ。ここ最近・・・我慢してるのか、全然泣けないみたいだったから。」 「泣いてたってどうにもならなかっただろ・・・。」 「それでも、泣いた後にはいつもヒロさん、とてもスッキリした顔してたんですよ。だから泣けない分、つらかっただろうな・・・って思ってました。」 それなら、お前だって・・・。 辛かった記憶も、張り裂けそうな胸の痛みも、過ぎてしまえば、こうしてまた二人抱きしめあえるようになる為に必要な時間だったんだろうか・・・。 野分に出会うまでは、悲しくて、悔しくて、一人きり泣いてきた俺だけど、野分と出会ってからは、涙の理由はそんな事ばかりではない。 嬉しくて、幸せで、こいつが愛おしくて・・・・それでも涙はあふれる。 そして、そんな時の涙は・・・ちゃんと野分も分かってくれているから、俺が泣いていたとしても、辛そうな顔をしたりはしない。 「俺は・・・泣き虫かもしれないけど・・・野分、お前は笑ってろ。」 「ヒロさん・・・。」 「・・・お前の、笑ってる顔が・・・すきなんだ。」 野分の顔が、一瞬きょとん・・・と固まって、それからすぐにこぼれるような笑顔になって・・・俺はその腕の中に痛いくらいきつく抱き締められた。
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4/1〜5/20 |