『月夜』


ベッドにゆっくりと体を横たえると、ヒロさんはすぐに起き上がって、またしても俺の股間を弄って来る。一生懸命な姿が何だか可笑しくてやりたいようにやらせて見ていると、「なんだよ。」と唇をとがらせるヒロさんが可愛い。

「今日は積極的ですね。嬉しいです。」

「・・・いつもいつも、やられっぱなしじゃおもしろくねぇ。」

「ハイ。じゃあ今日はヒロさんにお任せしましょうか。」

ベッドに仰向けに横たわった俺の太腿のあたりに跨ったヒロさんは、ようやく俺のジーパンからベルトを引き抜き、勢いよく放り投げた。
デニム地の固いボタンホールに苦戦している様子に手を貸そうとして、ぺしっと叩かれる。

「おれがやる。」

「じゃあ・・・俺はヒロさんを触っています。」

ヒロさんによく似合う、ベージュのスプリングコートの前を開いて肩から落とし、薄手のセーターの裾から手を差し入れる。
触れられる指先の感触に、ビクンと震える腰を両手で掴み、ボトムの前を寛げた。

「ん・・・おれ・・・けっこう、のんでっから・・・たたないかもしれね・・・。」

「いいですよ。俺、頑張りますから。」

「がんばらんでいい。」

やっと俺のジーパンと下着を一緒に引きずり下ろすと、ちょっと得意そうにヒロさんが俺のシャツを捲り上げる。
やっと暖まり始めた部屋の空気に晒される肌。
口唇を重ねながら、ヒロさんの脱がせた服を床にそっと落として、胸の上にその体をぎゅっと抱き寄せた。

「大丈夫ですか? 結構飲んでいたみたいですし・・・。」

「・・・へーき。きにすんな。」

跨っていた方向をくるりと変えて腰の位置をずらすと、ヒロさんの顔がゆっくりと俺の腰の方へ降りて行く。まだ半勃ち状態の俺を両手で包みこみ、ちゅっと音を立ててヒロさんの柔らかな唇が触れた。

いくら酩酊状態だからって、ヒロさんがここまで積極的になった事はこれまで見た事が無い。だいたいが途中でぐだぐだになって、裸のままコトに及ぶ以前に寝ちゃったり・・・なんていうのが関の山で。
酔ったフリで甘えたいなら、俺もトコトン騙されていようと思う。いつもプライドが邪魔をして赤くなったり青くなったり忙しい彼を自由にしてくれるのならば、アルコールの力を借りるのも悪くない。

先端の部分だけを口に咥えこんで、はみ出た箇所をゆるゆると指先で扱かれる。

この体勢だと、ヒロさんが舐めている顔・・・見えないんだよな。

少し残念に思いながら、胸の上に跨った白くてかわいいおしりを両手の指先でそおっと持ち上げて、その隙間に舌を伝わせると、俺を咥えたままヒロさんが喉の奥で小さく呻いた。


俺のものに舌を這わせ、一心不乱に口唇を使って擦りたてるヒロさんの愛撫に、だんだんと体の中心に向けて熱が集まり始める。
ただ、俺のものを舐めているだけなのに、俺の目前に晒された窄まりは触れられなくても、時折ヒクヒクと脈打っているみたいに震えて、どうしようもなく俺を誘った。

ヒロさんの腰を少し浮かせて、両足の間から前へと手を差し入れる。

「んうっ・・・ふー・・・う・・・。」

口を塞がれているがために、くぐもった小さな声で啼く。

片手で柔らかな付け根の双袋を揉みながら、もう片方の手の中に、勃ちあがり始めたヒロさんのものを握りこんだ。先端を滲ませる透明な雫を潤滑油にして塗り拡げると、手の中でくちゅくちゅと卑猥な音を立てる。
直接的な前への刺激に期待し、震える腰を顔の方へと引きよせ、口腔へと咥え込んだ。

「・・・・っあ・・・うあぁ・・・。」

まだ柔らかさの残るヒロさんの高ぶりを根本までぐっと吸い込み、遠慮なしに強めに舌を絡めつかせ、唇で扱くと、腰がガクガクと揺れる。そのまま快感を追う事に夢中になって、腰を振りたくなるまで、しつこく責め立てた。

「のわきっ・・・のわ・・・ンああっ・・・。」

俺がやるんだと言ってたわりに、もういっぱいいっぱいになってしまっているヒロさんは、俺のものに手を絡めたまま、ひっきりなしに背中を震わせ、可愛い声で喘いでくれている。
咥えたものへの愛撫はそのままに、ローションで濡らした指で後孔の襞をゆっくりと撫でてから、ぐっとその内側へと指先を差し入れた。

「・・・・・!」

ひゅっと一瞬、息を吸い込むヒロさんの背中を宥めるように、とんとんと叩く。
すぐに息を整え、ゆっくりと息を吐き出すヒロさんの呼吸に合わせて指をじわりと揺らめかせ、彼の体内を熱く蕩かせたくて、徐々に動きを早めていった。

「のわき。アッ・・・そこ・・イイ・・・ああン・・そこ、もっとこす・・って・・。」


乞われるがままに内側を掻きまわし、ヒロさんの弱い箇所を何度も何度も指先で抉る。

「・・・ヒロさん、俺も・・・。」

「んっ・・・ん・・・ほしっ・・・のわき、おまえが・・・ほし・・・っ。」

「はい。ヒロさん・・・。」

欲情して濡れた瞼に口づけて、その体をそっと抱き寄せる。
脚を伸ばして座った膝の上に同じ方向を向かせてヒロさんを座らせ、背後からぎゅっと抱きしめた。腕に伝わるヒロさんの心臓の打つ音がとても大きくて早い。

「挿れます・・・。ゆっくり息吐いていて下さいね。」

後ろから腰を抱きあげ狭い入り口に自分自身を添えると、無理のないようにまず先だけを潜り込ませる。じっくりと慣らした後庭は反発も小さく俺を包みこむように窄まり、ヒロさんの背中が俺の目の前できれいに反り返る。
両手首を後ろから両手で手を繋ぐみたいに掴んで引き寄せながら、ヒロさんの中に少しずつ自分自身を埋め込んでいく。

「アッ・・・アッ・・・あつ・・・い・・のわき・・・。」

握った手首だけで体を支え、膝の上に座ったヒロさんの体を突き上げ揺らす。安定感の無い体勢が心もとないのか、手首を拘束されたヒロさんの指先が掴む場所を求めて俺の膝やベッドのシーツを何度も引っ掻いていた。


目の前で切なく揺れる白い背中に繰り返し口づけ、ぐちゃぐちゃと湿った音をさせながらヒロさんの体の一番奥まで貫き、掻きまわす。

「イイっ・・・!・・・んっ・・・ンン!・・・やっ・・あああああ・・・。」

「・・・ヒロさん・・・・すごい。・・・はあ・・・・はっ・・・俺もいいです・・・すごく気持ちいい・・・。」

「のわき・・・のわき。あっ・・・ああっ・・・のわきィ・・・・!」

こういう時に名前を呼んでもらうと堪らないくらい、悦い。いつもよりずっと舌足らずな甘えた声で、何度も繰り返し俺を呼んでくれる。

 

きゅうきゅうに狭くて、温かくて、気持ちいいヒロさんのなか。
揺す振られる動きに翻弄されて、膝の上でだんだん前に倒れていく彼の中から一度自身を引き抜くと、シーツに膝をつかせ手首を後ろ手に掴んだ姿勢のまま、背後から再び貫く。

「あ・・・ああっ・・・やあ・・ン。」

俯いたヒロさんの髪がさらさらとシーツの上を撫でる。
俺と繋がった腰を高く上げて、背中側に両腕を取られた不自然な姿勢のまま貫けば、奥に振動が伝わる度に嬌声があがり、柔らかく蕩けた内部がさらにぎゅっと締めつけてきて。
ふいに動きを止めれば、我慢出来ず焦れるみたいにヒロさんの腰が揺らめいて、俺の腰に押し付けるような動きで、俺の想いに答えてくれるのだ。

中途半端に高められたまま触れられないヒロさん自身が、突き上げられる動きに合わせて揺すられて、先端を滲ませながら勃ちあがっている。
触って欲しくとも俺はヒロさんの手を掴んでいるから触れず、ヒロさんが自分で触りたくても手を塞がれていて叶わない。

「・・・のわきっ・・・・あああ・・・・・っき。」

「・・・・ヒロさ・・・ん。」

「の・・・・のわ・・・・す・・・き。」

喘ぎ声に混ざって小さく呟かれた声。
聞きなおそうと顔を近づけるものの、ヒロさんはいやいやをするみたいに頭を振って、唇を噛んでしまった。

「ね・・・もっと言って下さい。今日はいいんでしょう?」

「っ・・・あっ!・・・・あっ・・・。」

「ヒロさん、・・・言って。」

腰をゆっくりと引いて、先だけを内部に残したまま動きを止めた俺を、ヒロさんが振り返る。声を出さずに「野分」と唇が形をなぞり、また頭を横に振った。

「・・・ヒロさん・・・。」

胸の中が愛おしさでいっぱいになる。
好きで、好きで、好きで・・・・
どんなに独占しても、激しく抱いても、俺の内側から溢れてくる想いは果てる事なく、ヒロさんを困らせる程に求め続けてしまうんだ。

「すき。野分・・・好きだ・・・好き・・・。」

繋がったまま、シーツに顔を押し付け、なかば叫ぶような告白。

俺はずっと握っていたヒロさんの手首を離すと、糸が切れたように崩れる彼の体を両腕で抱きとめ、うつ伏せていた体をひっくり返した。
眼前に見下ろす大好きなひとの顔はぐしゃぐしゃに涙に濡れていて、瞬きのはずみで眼尻からぼろぼろと涙が零れ落ちた。

「・・・え?ヒロ・・・さん?」

やり過ぎてしまったんだろうか。
ずっと後ろを向いていたから気付かなかった。泣き顔に動揺して繋がっていた体を思わず離す。

「あ・・・いやっ・・・。」

「ヒロさん、どうして泣いているんです?痛かったんですか?」

「ちが・・・。」

慌てて泣きぬれた頬に触れる俺の手をヒロさんが強く掴む。

「ばか・・・そうじゃねぇよ。こんな・・・途中でやめんな・・・!って・・・。」

ヒロさんの中でぬるぬるになっていた俺のものを指先で探って、後孔にぐっと押し付けた。
誘われるままに体を進める。
深く潜り込むそれが最も敏感な部分を掠めたのだろう、ヒロさんはまたぼろぼろと涙を零して、俺の頭を強くかき抱いた。




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